フランスのスパラックスからのリシュー。ブリジット・フォンテーヌは、フランスのブルターニュ地方モルレー出身の女性シンガーで、実験色のあるアシッド・フォーク的シャンソン歌手として独自の居場所を確立した、ヒット曲もあるビッグ・ネーム。本作は、73年にフランスBYG(ビッグ)からリリースされたフィフス・アルバムで、アレスキとブリジットのデュオ名義、確か邦題は「幻想の会話」。メンバーは、ブリジットとアレスキを中心に、クロード・パビー、ジャン・クエリエ等々が曲によって適時参加していて、プロデュ-スはビッグ・プロダクション。ボーカル、つぶやき、ささやき、ギター、フルート、バンドネオン、パーカス等によるシンプルな演奏なのだが、アシッド・フォーク、サイケ、シャンソン、ジャズ、エクスペリメンタルがハイブリットされた楽曲に、ランボーやコクトー、バタイユ、ラブレー、ルイス・キャロル等の影響下にある内省的な詩を絡めた、非常に独特な湿った質感と浮遊感満点のサウンドを展開。全体にアシッド・フォーク色が強く、ブリジットのアレスキの私的で無邪気な会話や告白を聞いているような感じで、淡々とした内省感と哀愁、映像的な場面転換の妙は、ほとんどトリフォーやゴダール、リベットやルイ・マル辺りのヌーベル・バーグ以降のフランス映画の雰囲気そのものという印象。シャンソンとしてのブリジットの諸作の中では最も知名度はないようだが、アシッド・フォークとして聴くならもしかして最高作かも知れない。ともかくも、格別の心地好さを放つ大好盤と思う。素晴らしい!。
輸入盤/デッドストック入荷
(Acid Folk/Psyche,Folk,Art Rock / Jewel-case CD(1995) / Spalax/France)